IT系資格の中でよく知られている国家試験として、基本情報技術者試験があります。今回は、その基本情報技術者試験の難易度を中心に、申し込み方法や勉強方法まで、ご紹介したいと思います。
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最終更新日:2023年12月7日
目次
基本情報技術者試験は、経済産業省が認定する国家試験「情報処理技術者試験」の区分のうちの一つです。ITエンジニアとしてひととおり知っておきたい基本の知識が詰まった、「ITエンジニアの教養」的なポジションといえる試験です。一度取れば有効期限もなく、受験料もベンダー試験に比べて安いので、迷っている場合は取っておくことがオススメです。
なお本試験は、2023年の4月より、通年試験化に伴う大幅改訂が予定されています。改訂により、試験の実施方式、および出題範囲が大幅に変更される予定です。
2023年度以降に受験を予定されている方は、変更点のまとめをご確認ください。
▶ 5. 2023年4月の制度改訂による変更点まとめ
現行制度での試験実施は、2022年度下期試験が最後になる予定です。すでに現行の試験範囲で勉強を行っているなど現行制度での受験を希望している方は、申し込み期間を逃さないようご注意ください。
基本情報技術者試験は、その名の通り「ITエンジニアの基本」です。その内容は学生の時に情報系の学科で勉強したり、情報系の業界で働いていたりするとよく聞く用語から構成されています。ピンポイントで実務にすぐ役立つ知識ばかりではありません。しかしIT業界でエンジニアとして長く働いていると、これらは「知っている前提」で話をされる内容ともいえます。
そのため、特に情報系以外の出身者の方が基本情報に合格していれば、情報系の出身者と同等レベルの基本知識を備えているというアピールになるのです。
基本情報技術者試験の難易度を知るために、まず他の情報系試験と比較してみましょう。
経済産業省が定める「ITスキル標準(ITSS)※」によると、基本情報技術者試験の認定レベル、および各レベルで人気の試験は、次のようになっています。
※ITスキル標準とは:経済産業省が定めるIT関連能力を体系化したスキル指標
ITSSの認定レベル | 同レベルの主な試験 |
---|---|
エントリレベル(レベル1) | ITパスポート試験、Ruby Silver、PHP初級、ORACLE MASTER Bronze など |
エントリレベル(レベル2) | 基本情報技術者試験、CCNA、Ruby Gold、PHP準上級、ORACLE MASTER Silver など |
ミドルレベル(レベル3) | 応用情報技術者試験、CCNP、PHP上級、ORACLE MASTER Gold など |
このように基本情報技術者試験は「エントリレベル(レベル2)」に分類されており、情報系の資格の中では入門者(エントリ)向けながら、ネットワークエンジニア向けの人気資格「CCNA」やデータベースエンジニア向けの人気資格「ORACLE MASTER Silver」などと並ぶ、少し難度高めの試験となっています。
なお基本情報技術者試験はまだちょっと難しいという方が先に受けることを考えるのは、「ITパスポート試験」。基本情報技術者試験をクリアした方が次に目標とするのは、「応用情報技術者試験」というケースが多いようです。
日程 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
平成27年度春期 | 46,874 | 12,174 | 26.0 |
平成27年度秋期 | 54,347 | 13,935 | 25.6 |
平成28年度春期 | 44,184 | 13,418 | 30.4 |
平成28年度秋期 | 55,815 | 13,173 | 23.6 |
平成29年度春期 | 48,875 | 10,975 | 22.5 |
平成29年度秋期 | 56,377 | 12,313 | 21.8 |
平成30年度春期 | 51,377 | 14,829 | 28.9 |
平成30年度秋期 | 60,004 | 13,723 | 22.9 |
平成31年度春期 | 54,686 | 12,155 | 22.2 |
令和元年度秋期 | 66,870 | 19,069 | 28.5 |
令和2年度春期 | 中止 | ||
令和2年度10月(CBT方式) | 52,993 | 25,499 | 48.1 |
令和3年度春期(CBT方式) | 32,549 | 13,544 | 41.6 |
出典:統計情報|IPA
表のように、基本情報技術者試験の合格率は20~30%で推移しています。令和2年度10月分から合格率が50%近くまで跳ね上がっていますが、これは新型コロナウイルス対応により、従来型の筆記試験ではなくCBT方式が採用されたことが原因の可能性があります。短期的なイレギュラーの可能性もあるため、注意が必要です。
SEの新人研修中に基本情報技術者試験に合格した筆者が、実際に使った勉強時間をご紹介したいと思います。
■ 情報系学科卒業の筆者の場合
筆者が合格までに勉強した時間は新人研修中の2週間、計50時間ほどでした。
毎日の研修のあとに3時間ずつ設けられた自習時間が10日間で、計30時間。それと休日の自習が計20時間ほどです。この研修でほぼ全員が取っていると先輩から聞き、自分は情報系出身なのに落ちたら恥ずかしいかもとかなり集中して取り組んだ結果、あまり余裕のない点数で合格できました。
ただ筆者の場合は情報系出身だったので、テクニカル系の内容はほとんど学んだことのあるものでした。そのため参考書の学習はほぼストラテジ系とマネジメント系のみで、配点の6割を占めるテクニカル系の学習は過去問の演習から始めることができたのが、時間短縮になったと思います。
逆にストラテジ系やマネジメント系は、学生の頃には全く見たことのない用語ばかりが並んでいて焦りました。情報系出身という方も、油断せず早めの着手がオススメです。
■ 情報系以外の学科を卒業した同期の場合
同期には情報系以外の出身者が、3~4割ほどいました。うち一人は生物系出身でIT関連は完全な初心者でしたが、同期で一番高い点数で合格しました。彼女は研修が始まる前から勉強を始め、春休みから研修中までの計2か月半ほど、ほとんどの自由時間を試験勉強に費やしたようです。特に理解に時間がかかったのは、テクニカル系だったとのことでした。
このように基本情報技術者試験は試験範囲がかなり幅広いため、試験範囲を丁寧に学習することで、これまで学んだ専門に関係なく良い結果を出せる試験といえるようです。
令和4年度下期試験の、試験会場や日程、受験料は次の通りです。
試験会場 | 試験会場検索・予約状況確認|プロメトリック |
---|---|
試験の日程 | 2022年9月頃~2022年11月頃の期間での実施を予定 |
受験料 | 7,500円 |
令和2年秋期以降の~令和3年秋期試験は、従来の筆記試験ではなく、コンピュータ入力で解答する「CBT方式」にて実施されています。令和4年下期試験も、このCBT方式での実施が予定されています。
なお現行の試験範囲では最後の試験実施となる予定です。
申し込みのタイミングを逃したくない方は、IPA公式で配信されているメールニュースへの申し込みがおすすめです。このメールニュースでは、申し込み開始のお知らせなどが配信されています。
▶ メールニュース|IPA
CBT方式で行われる試験の申し込みは、次の手順で行います。
• 試験を取りまとめるプロメトリックの「オンライン受付」ページへアクセス
• プロメトリックIDを登録してログイン(登録済みの方はそのIDでログイン)
• 試験会場と日時を選択して予約
• 受験料の支払い(クレジットカード・コンビニ・Pay-easy払い)
• 予約完了メールと確認書の印刷
従来方式(筆記試験)となる場合は、次の手順で申し込みを行います。
• IPAの「受験申込み」ページへアクセス
• 試験区分の選択
• 願書の記入&内容確認
• 受験料の支払い(クレジットカード・コンビニ・Pay-easy払い)
• 後日郵送にて受験票が到着
IPAが認定した特定の講座やeラーニングを受講すると、「午前試験免除に係る修了試験」という試験を受けることができます。この試験に合格すると本番の試験会場で午前試験を受験する必要がなくなります。なおこの免除の有効期限は、修了試験から「1年間」です。
試験の申し込みをする前に、ざっとでいいのでまず参考書を全体通して読んでみることがおすすめです。
全体のレベル感をチェックして、もし難しすぎると感じた場合は、ITパスポート試験からの挑戦も検討してみてはいかがでしょうか。
1章から順を追って勉強していくのではなく、まず全体をざっくり読んで、知っている分野と知らない分野を切り分けてから始めることがおすすめです。試験日までに確保できそうな時間を考えて、その配分が重要になります。あまり時間がない場合は用語を全く知らなかったところだけ参考書を読み、あとは過去問を解きながら間違えたところだけしっかりと解説を確認していく方法もおすすめです。
特にIT未経験の方におすすめの参考書を、ピックアップしてみました。
■ キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者 令和03年
▸著者:きたみりゅうじ
▸発行年月日:2020年12月12日
▸サイズ:A5
▸ページ数:729ページ
▸価格:¥2,310(税込)
イラストが多く、初心者がとっつきやすいことを最重要視しているタイプの参考書です。
これを読んで内容が難しいと感じる場合は、ITパスポート試験から始めることを検討してみることもおすすめです。
【良いレビュー】
イラストが多く、難しい概念やわかりづらい概念、仕組みを直感的に理解できるように構成されています。文章を読んだだけではピンとこないようなシステム要素をかなりくだけた感じで、文語より口語で解説しているような本なのですが、著者の他の書籍を見てもわかるよに、評価できる点は要点をきちんと理解していることです。(一部抜粋)
【良くないレビュー】
イラストでイメージしやすくなっているとは思いますが、情報量が希薄で他の教材との併用が必要と感じました。(一部抜粋)
出典:Amazon
■ かんたん合格 基本情報技術者教科書 令和2年度
▸著者:五⼗嵐順⼦
▸発行年月日:2019年11月21日
▸サイズ:A5
▸ページ数:480ページ
▸価格:¥1,408(税込)
2021年7月現在、令和2年版が最新です。CPU(シーピーユー)など簡単と思われがちな用語まで全ての欧文に丁寧にルビが振ってあり、読み方を間違って覚えていた!というようなことが防げます。また巻頭特集で数学問題がピックアップされており、そこが苦手な人にもおすすめです。
【良いレビュー】
基本情報技術者は出題範囲がとても広く、隅から隅まで覚えるのは結構たいへんです。同書では、試験でよく出題される内容を「ココが出る」にまとめられているので、そこを重点的に押さえて勉強することができます。(一部抜粋)
【良くないレビュー】
ITパスポートもこのシリーズを使用していたので、FEもこちらを購入。解説も丁寧で、イラストもあり分かりやすい。ただ他の参考書と比べると、内容が浅い感じがして網羅性に欠けている気がした。これと併用して、過去問や分野ごとの参考書を買ったりすると良いかもしれません。(一部抜粋)
出典:Amazon
なお上記で紹介した参考書2冊は、わかりやすさを重視しているため試験範囲の網羅性には欠けているという声もあがっています。IT経験者の方など簡単な内容では物足りないという場合には、「基本情報技術者 合格教本」がおすすめです。
難解な表現も多いですが、とにかく試験範囲の網羅性が高い一冊となっています。
実は筆者は、この合格教本の受験当時のバージョンを使用して合格しました。ただあまりにも情報量が多いので、きっちり全て覚えようとすると厳しいです。あまり立ち止まらずに全体を早めに読み流して、過去問演習しながら分からないところを調べる辞書的に使う利用法がおすすめです。
どれが自分にあっているか迷った場合は、ぜひ実物をお近くの書店で手に取ってみて下さいね。
参考書で試験範囲の確認が終ったら、次はひたすら過去問を解いて出題傾向をつかんでいくのがおすすめです。まずは無料で過去問をチェックしたいという方へ、過去問を掲載しているサイトをご紹介します。
■ 情報処理技術者試験 公式サイト
▸ URL:https://www.jitec.ipa.go.jp/1_04hanni_sukiru/_index_mondai.html
公式が提供する過去問題です。問題と解答例のみで詳しい解説などはありませんが、とにかく早くアップされるのが特徴です。
■ 基本情報技術者試験ドットコム
▸ URL:https://www.fe-siken.com/
このサイトの「過去問道場」というコーナーでは、無料で過去問とその詳しい解説をチェックすることができます。オリジナルの模擬試験も2回ぶん用意されており、本番さながらのマークシートも付いているPDF版と、いつでも手軽にアクセスできるWeb版の2種類の形で挑戦することができます。さらに受験者用の掲示板などのコンテンツもあり、とても充実したサイトとなっています。
■ かんたん合格 基本情報技術者過去問題集 令和3年度下期
▸著者:株式会社ノマド・ワークス
▸発行年月日:2021年06月08日
▸サイズ:B5
▸ページ数:480ページ
▸価格:¥1,628(税込)
新制度に対応し午後試験もカバーしている予想問題が2回ぶん付属している、過去問題集です。全ての午前問題に出題率が書かれているため、重要な問題が一目でわかるところがポイントです。問題集本体に2年分の過去問とその解説が掲載されているのに加え、さらに16年分の過去問とその詳細な解説をPDFでサイトからダウンロードすることができるようになっています。なお問題集本体についても、書籍を購入したらオマケでPDF版をダウンロードすることができるようになっています。過去問の演習を一通り終えた後に、模擬試験として予想問題を解いてみることがおすすめです。
【良いレビュー】
結構安価ですが、それに比べて内容は充実しています。試験情報や各分野の学習のポイントや近年の傾向は冒頭でコンパクトにまとめられています。ここは必ず一度は読みましょう。他、過去問題集と思いきや、ほぼ半分は予想問題集で、精度が高いです。(一部抜粋)
出典:Amazon
2023年4月から実施される通年試験化に伴う変更点を表にまとめました。
なお現行の午前試験は「科目A試験」に、午後試験は「科目B試験」に試験名称が変更される予定です。
新制度での受験を予定している方は、続報も要チェックです。
2022年度試験まで | 2023年度試験から | |
---|---|---|
実施日 | 年2回(上期・下期) | 通年(任意の日程で受験可能) |
出題数 | 【午前試験】80問 【午後試験】11問(うち5問選択) |
【科目A】60問 【科目B】20問 |
試験時間 | 【午前試験】150分 【午後試験】150分 |
【科目A】90分 【科目B】100分 |
採点方式 | 素点方式 | IRT(Item Response Theory:項目応答理論)方式※ |
出題範囲 【午前】 【科目A】 |
基本情報技術者試験シラバス 参照 | 現行の午前試験と同じ |
出題範囲 【午後】 【科目B】 |
同上 |
次の二つの分野を中心とした構成に変更する • 情報セキュリティ • データ構造及びアルゴリズム また個別プログラム言語に関する出題は、普遍的・本質的なプログラミング的思考力を問う擬似言語による出題に統一する |
(情報は2022年5月25日発表時点のものです)
※IRT方式とは…複数のテスト項目に対する解答パターンから推定される値を用いて潜在特性尺度上に受験者を位置づけ、その受験者の能力や特性の程度を表わす方式
出典:情報処理技術者試験における出題範囲・シラバス等の変更内容の公表について|IPA
現時点の情報では、特に旧午後試験の大幅な変更が予定されています。
新しい科目B試験のサンプル問題はIPAから公表されていますので、要チェックです。
▶ 基本情報技術者試験 科目Bのサンプル問題|IPA
今回は基本情報技術者試験についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。この試験は一度合格すれば有効期限のない国家試験である上に、ITエンジニアに必要な基本が全部入りの試験となっています。迷った場合は、一度受験してみて損はないのではないでしょうか。
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