ここ数年で「未経験者向けの転職保証付きプログラミングスクール」は急増しており、比例する形で「プログラミングスクール卒業生」も増加しています。
一方でプログラミングスクール卒業生は、フリーランスを含む転職市場全般では「実務経験1年未満」など「好条件での転職や業務委託案件の受注が難しい層」に入ります。そうなるとスクール卒業生にとっては、卒業後のキャリアアップが意外と難しいという難題にぶつかってしまいます。
今回はプログラマカレッジのキャリアアドバイザーと、フリーランスエージェント「プロエンジニア」のコンサルタントが対談。プログラミングスクール卒業生が意識すべきキャリアパスや「プログラミング未経験から才能が開花する人と伸び悩む人の違い」を、語ります。
最終更新日:2023年1月4日
プロエンジニア
コンサルタント 尾﨑淳太
フリーランスエンジニア様への案件紹介をメインに担当しております。エンジニア様ひとりひとりの幅広いニーズに沿ったご提案を心がけ、常にスピード感を持ち業務に取り組んで参ります。参画後のサポートも安心感をもってお任せください。これまで培った営業職のキャリアを活かし、エンジニア様のキャリア形成のお手伝いをさせて頂くことは勿論のこと、広く多方面での伴走者といったイメージでお付き合いできればうれしいです!
プログラマカレッジ
キャリアアドバイザー 加藤憲康
キャリアアドバイザーとしてIT経験・未経験問わずに求職者様の転職活動をご支援をさせていただいております。
私自身、大学で情報工学を専攻後、メーカー系の大手Sierに就職し、SEとして働いていた経験があります。業界経験者であるという強みを活かし、求職者様に寄り添った面談を心がけております。
目次
尾崎(プロエンジニア):
新型コロナウイルスの影響はフリーランス市場でも、プログラミングスクール市場でも大きかったですよね。しかしウィズコロナ~アフターコロナに移行する中で、転職市場は活気を取り戻した感が強いです。未経験者層の方も、またスクールに戻ってきているのでは?
加藤(プログラマカレッジ):
コロナが最初に流行り出した2020年頃はさすがに様子見だったのか、プログラマカレッジの受講生も激減しました。でも2022年に入ってからは右肩上がりに回復しており、今ではコロナ前を超える月間200名程の未経験の方々に研修を受講してもらえている状況です。
尾崎(プロエンジニア):
個人的な感覚ですが、エンジニア=自由な働き方といったイメージを持っている方が多く、漠然とエンジニアへのキャリアを目指す方が増えている印象です。実際、プログラミングスクールが次から次へと増えていますよね。プロエンジニアに未経験者の方々から「未経験からフリーランスになるにはどうしたらいいか」と問い合わせをいただくこともあり、そうした際には「まず学習しましょう」とプログラマカレッジを紹介していますよ。
加藤(プログラマカレッジ):
ありがとうございます。この3年ほどで一気にテレワークが全国的に浸透したことも大きいですよね。業種によっては出社に軸足を戻す企業も出てきている中で、よりITスキルを磨いて、テレワーク中心で今後も働きたいという方も新卒/既卒問わず増えている印象です。ただ少なくとも私が見ている限りでは、ほとんどの方は「プログラミングは見たことも触ったこともない」か「無料学習サイトを使って多少は勉強してみました」というレベルです。勉強していたとしても、一人でWebサイトを作れるといったレベルではないので、初歩的ではありますがHTML/CSS/JavaScriptを1から学ぶことの重要性というのを改めて実感しています。
加藤(プログラマカレッジ):
フリーランスエージェントの担当者から見ると、スクール受講生/卒業生とはどのような人材に見えていますか?
尾崎(プロエンジニア):
学習意欲や向上心は素晴らしいと思います!一方で先ほどもお話したように、様々なスクール卒業生の方から「フリーランスになるにはどうしたらいいですか?」と相談を受けます。スクールを卒業した後「フリーランスとして独立できるだけのスキル」を中々培えず、苦労している方も多いのかなと思うのが本音です。
ちなみに実務未経験者の方々からは、面談時にどんなキャリアや将来的な働き方の希望をいただくことが多いですか?
加藤(プログラマカレッジ):
週2~3のリモートワークが可能で、できれば常駐ではなく自社内勤務。なおかつ福利厚生も充実していて…という感じですね。ただ卒業後すぐに実現できるほど甘くない、とは理解している方も多いです。上のような働き方を「近い将来実現できればいいな」というニュアンスです。
尾崎(プロエンジニア):
フリーランスエージェント側から見ると「実績がある方」「即戦力クラス」のベテランが求める条件に近いとは感じます。
加藤(プログラマカレッジ):
ちなみにプログラマカレッジの卒業生はまずは正社員からキャリアを始めるので、カリキュラムさえきちんと修了すれば9割以上の方は就職が決まります。ただはじめはやはり常駐からスタートすることが多いのは事実ですし、卒業後何年も経った元受講生の方の近況は細かく追い切れていないケースもあります。
尾崎(プロエンジニア):
IT業界は実力主義の世界でもありますし、スクール卒業後のキャリアアップをどう実現していくのかというのは若手にとって大きな問題点とは言えそうです。
エージェントから見れば、少なくともやる気や入社後の成長性が厳しく見られるというのは間違いないです。特に経験者も含む転職市場では、特にIT系でリモート前提の職場が増えました。逆に言えば、対面で先輩社員が後輩に長時間指導するのは難しいということなので、自走できる才能は潜在的にでも必要ですよね。
加藤(プログラマカレッジ):
その点は非常に重要だと思います。確かにスクール卒業生は、卒業した時点ではまだ駆け出しに過ぎません。「即戦力クラス」ということはまずあり得ないです。だからこそ自走し続けられる才能は貴重ですし、プログラマカレッジでも「正しい努力の続け方」を伝えられるように心がけています。
加藤(プログラマカレッジ):
自走でき、プログラミング未経験から才能が花開く人は、あえて極論を言いますが「エンジニア以外の仕事」でも評価される人だと思うんです。
プログラマカレッジの卒業生の、20代半ばの男性がまさにそのようなタイプの方でした。この男性はプログラマカレッジを通じて「初めての転職」をするという方で、英会話ができるという特別なスキルもありました。なおかつ「高学歴」だったんです。
尾崎(プロエンジニア):
未経験者層向けの募集であれば、エンジニア職以外でも採用されそうなキャリアですよね。
加藤(プログラマカレッジ):
プログラミング以外のことである程度キャリアを築いている方がゼロから学習を始める場合、意外と初歩的な勉強に耐えられなかったり、ふとした時に「上から目線」のコミュニケーションをされるケースがあるんです。学習や転職に関するアドバイスを素直に聞き入れられないということも多いですね。ですが、この20代半ばの方は違いました。エンジニアとしてはゼロからのスタートであるということを自身で受け入れており、きちんとアドバイスを受け入れ、他の人への気遣いもでき、空いた時間には主体的に勉強を進めていました。最終的にはITコンサル関係の企業に就職され、自らコーディングもしつつ、顧客への提案業務にも従事されています。
尾崎(プロエンジニア):
非常に興味深い事例です。実務未経験の場合、正直に言って採用サイドが期待することは「ポテンシャル」以外に無いんですよね。「積極的にコミュニケーションを行い、技術の吸収をして、業務に取り組んで欲しい」というのが、採用サイドの強い希望です。加藤さんのお話で特に面白いと思ったのは、その男性の長所は「プログラミングができること」よりも「コミュニケーション力」だと客観的に思えることです。シンプルなようですが、素直で、相手を尊重したやり取りができる人って貴重な存在ですよね。
裏話ではありますが、エージェントやSESが企業側に人材を紹介するときは「リーダー級」と「若手」の採用を1セットで提案することも多いんです。リーダー級は即戦力ですが、良くも悪くも何処でもやっていける人ですから離職リスクもあります。だからこそ最初はスキルが足りなかったとしても、リーダーのもとで若手が育てば「将来のマネジメント層」として十分に採用価値があります。
加藤(プログラマカレッジ):
プログラミング学習をしている当人からすれば「スキルをもっと伸ばさなくては…」と焦るでしょう。一方で企業側からすれば、そもそも「スキルは入社後にリーダーのもとで伸ばしてくれればOK」ということですよね。
尾崎(プロエンジニア):
はい。逆に言えば若手からすれば、リーダーのもとで3年程度経験を積めば、「社内での昇進」「フリーランス転向」など様々なキャリアパスが見えてくると思いますね。
加藤(プログラマカレッジ):
実は事前に尾崎さんとは、プログラミングスクール卒業生をペルソナに「おすすめのキャリアパス」を3例ずつ出し合いました。すると互いに、意見がほぼ一致していたんですよね。プログラマカレッジ、プロエンジニアが共通して「スクール卒業生など実務未経験者」におすすめするキャリアパスは以下の通りです。
尾崎(プロエンジニア):
それぞれのキャリアパスが、未経験者層の方におすすめの理由は以下の通りです。
1. スペシャリスト/フルスタックエンジニア
サーバーサイドからフロントエンドまで幅広く対応できるため、案件に困ることが無くなります。
2. マネジメントスキルを積み大規模案件を担当する
PM(プロジェクトマネージャー)として大規模プロジェクト全体を管理できるスキルがあれば、高単価案件を獲得しやすいです。
3. ITコンサルタント
顧客の経営課題をITを駆使して解決することを目指すポジションのため、IT技術と経営の両面に関心があるゼネラリスト的な志向が強い方におすすめです。開発以外にも仕事の幅を広げていきたい場合に向いています。
とはいえ上記のキャリアは非常に理想的なものなので、実際にイメージ通りに歩んでいる方は少ないです。「フルスタックエンジニアになりたいけれどフロントエンドが苦手」「PM(プロジェクトマネージャー)になりたいけれど、所属している企業が大きすぎてチャンスが回ってこない」など、実力あるエンジニアの方々も実際には様々な悩みを抱えているのが現実です。紆余曲折しながらも愚直に目の前の仕事で信用を勝ち取り、徐々に裁量を得ていくことが大切です。
加藤(プログラマカレッジ):
今どれだけ活躍している人がいたとしても、その人は最初からすごかったわけではなく、誰しもが新人時代を乗り越えてきて今があります。最初から何でもできる必要はないため、目の前の目標を一つ一つクリアしていくことで、理想のキャリアに近づいていくことができるはずです。
尾崎(プロエンジニア):
エージェントの1人として、スクール受講生や卒業生の方には「焦らないことも大切だ」とお伝えしたいです。
初歩的なプログラミングから学習を始めて中々思うようなアプリが作れないと、AIやブロックチェーン、アドテクなど最先端の技術がまばゆく見え、そうした業種のエンジニアに嫉妬心を覚えて焦ってしまうことも多いと思います。ですが実際にはそれらの業種の人々も、紆余曲折しながら、努力し続けて「いま」があります。プログラミングの世界では基礎を飛ばして一足飛びにスキルが身につくということはありません。しかし、代わりに実務未経験者を受け入れてくれる企業は絶対に成長を待ってくれます。皆さんが思うほど「入社時点でのスキル」は実は重要ではないですし、焦る必要はないです。まずは地道に勉強し、卒業した後も「3年間」はぜひ現場ないしは自学自習でスキルを磨き続けてほしいです。その結果、新たなキャリアが自然に開けてくるはずです。
加藤(プログラマカレッジ):
「続けることができた人」にこそ、大きなチャンスが訪れると思います。いまからプログラミングを始める人は、今できることややるべきことをコツコツとやっていきましょう。それが理想のキャリアを実現する最大の近道だと思います!
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